ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.156 リゾート急行

 終端駅または途中駅で他線区への接続がない路線のことをしばしば盲腸線と呼ぶことがあるが、こういった路線の多くは地域輸送を主とするローカル線であり、優等列車や長距離列車が運転されているのは稀である。盲腸線でありながらそういった列車が運転されている路線というのは、少なからずその地域にしかないものがある場所である。例えば本邦で言えば吾妻線で運転されている特急「草津」あたりが該当するだろうか。草津はその名の通り、草津温泉の観光需要のために存在しているわけで、もし仮に草津温泉がなければおそらく運転されていなかっただろう。

 さて、同じような盲腸線優等列車が運転されている路線がドイツにも存在する。ドイツ南部、オーストリアとの国境の街へと至るオーベルストドルフ支線である。オーベルストドルフ支線はアルゴイ線インメンシュタッド(Immenstadt)から分岐し、スキーリゾート、温泉地として有名なオーベルストドルフ(Oberstdorf)へと至る全長20.7kmの路線である。冬はスキー、夏は避暑地として有名なオーベルストドルフへは毎日2往復のインターシティー列車が運転されており、1往復は遥々ドイツ北部ハンブルクとを結ぶNebelhorn号、もう1往復は中北部のドルトムントとを結ぶAllgäu号である。後者Allgäu号は比較的長編成であることと大幹線の真っただ中のシュトゥットガルト中央駅以南を経由するためかシュトゥットガルト以南では218形機関車重連によって牽引される。

 ドルトムントからやってくるAllgäu号IC2013列車はオーベルストドルフ18時13分着。サマータイムが実施される期間であればオーベルストドルフ周辺で絶好の光線で撮影することができる。01形202号機の団体臨時を撮影した日(Report No.155 Baureihe 01 - ぽっぽ屋備忘録)の午後は朝の雲が嘘のように晴れ渡っており、これはIC2013列車撮影にうってつけのチャンスと踏んでアウトバーンを一路オーストリア方面へひた走った。

 やってきたのはオーベルストドルフ駅の少し手前、アルトシュテッデン(Altstädten)駅とフィーシェン(Fischen)駅の間のポイント。ここは背景にグリューンテン山(Grünten)を望むポイント。農道の片隅に車を止め同行の友人らと各々セッティングをしていると、お天気であれば考えることはどこの鉄道ファンも同じなのかドイツの地元人とおぼしきファンもやってきた。

DB Br218 IC2013 Altstädten

 あたりがちょうどよい秋口の斜光線で茜色に染まりだしたころ、ドルトムントからのIC2013列車がエンジン音をとどろかせてやってきた。218重連に引き連れられて食堂車込み9両の豪華編成はオーベルストドルフまでの残り少ない旅路を足早に駆け抜けていった。