ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.168 里帰り

 2021年春ダイヤ改正では、七尾線国鉄形が一掃され新造521系への置き換えが完了した。七尾線で運用されていた国鉄形は、JR西日本移行後に関西圏で余剰車となっていた113系初期車や北陸地区での急行列車削減に伴い余剰車となっていた交直電源両用急行型車両を改造したもので、他地域の残存国鉄形と比べてもかなりの長寿車両たちであった。特に415系に限って言えば、置き換えまで運用されていたものの中には車齢57年というJR全体で見てもかなりの高齢車さえ存在した。これら415系の改造元となった113系は新製配置こそ高槻や鎌倉とまちまちではあるものの、国鉄時代から長らく阪和線福知山線で活躍していたものであり、吹田工場や鷹取工場で検査を受けていた車両たちである。運用離脱後は多くが金沢近郊の松任工場へと回送され、走りなれた関西の地に戻ることなく北陸の地で解体されるかに思われた。ところが、松任工場における業務容量の都合なのか、一部車両について松任工場ではなく吹田工場へ回送しての解体手配となったのである。この対象となった車両の第一陣は、運用離脱後長らく金沢で留置されていた415系のC06編成とC09編成であった。C06、C09編成ともに元をたどればそれぞれ3両編成中2両が新製配置が高槻や宮原の関西圏育ちの車両たちであり、はからずも関西へ里帰りしてその最期を迎えることとなったのである。

 吹田工場への移送は宮原区所属のDD51がクモヤ145を伴車として連結し415系当該2編成を連結する形で行われた。はじめこの話を聞いた時には「いやいや、まさか今時そんな長距離移送を・・・」と半信半疑、なかばトンデモ扱いであったのだが、予定されていた日の前日夜にDD51とクモヤ145が金沢へ向かったと知り、本当のことであると確信したのだった。移送列車は2021年4月22日朝の湖西線を上るダイヤ設定であったため、深夜から友人の車に乗せてもらい、早朝の湖西線和邇駅北の撮影地へと降り立った。現地についてみればすでに自分たちと同じようにどこから情報を聞きつけたのか、早朝のネタ列車とは思えないほどの人出となっていた。

DD51 1191+クモヤ145-1052+415系C06編成・C09編成

 早朝にしては賑やかな撮影地で待つこと1時間ほど、湖西線の高架を赤、青、赤のカラフルな編成が駆けてきた。クモヤ145にさえ目をつぶれば、かつての九州地区の50系客車を引き連れた客車列車のようでもあったが、けたたましくうなりたてるモーター内蔵の冷却ファンの音が連結されているのが国鉄形電車であることを再認識させてくれた。しかしながら、撮影日は平日、余韻に浸るのはほどほどに、各々学校へと会社へと足を急がせたのであった。