ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.58 村雨の日に

 大地を揺らし、黒煙と蒸気を吐き走る蒸気機関車の姿はいつの時代も人々を魅了してやまない。そして近年では、その魅力を利用して地域活性化などにつなげようという動きもみられる。ひとたび蒸気機関車が走るとなれば鉄道ファンのみならず多くの観光客を呼び込むことができるからだ。

 そんな中、東武鉄道が新たな動態保存運転計画へ乗り出した。東武鉄道というと全線電化の電車路線という印象が強い方が多いかもしれないが、ほんの50年前まで蒸気機関車が貨物を牽いて走っていた。そこで動態復活運転の蒸気機関車として白羽の矢が立てられたのがJR北海道の所有していたC11-207であった。C11-207は2000年に動態復活したものの、新型ATSの設置難、JR北海道の経営難などが重なり2014年に運用から離脱したのだった。

 東武鉄道ではこれを借り受けて動態復活運転を行うこととし、次に牽引する客車の手配を行うことになった。ここで、手配されることになったのがJR四国が保有しており長らく休車となっていた高松運転所所属の12系および14系であった。これらは多度津工場にて再整備の上東武鉄道へ譲渡されることとなった。四国からの譲渡とあって船での輸送も考えられたのだが、譲渡輸送はJR貨物による甲種輸送で行われることになった。輸送に際して、牽引機として送り込まれたのは今年国鉄色に復刻されたばかりのEF65-2139であった。EF65が12系・14系を牽引する、まさにムーンライト高知・松山の再現ともいえる編成が実現することになり輸送前日からインターネット上では話題沸騰となっていた。ここでさらに事件が起こる。なんと寝台特急「瀬戸」を模したヘッドマークが装着されたのだ。記録的日照不足と報道され、あいにくの雨模様と予報されいたのだがこれだけの大ネタ、再びお目にかかれるとも思えず友人たちと撮影に出向いた。

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 やってきたのは醒ヶ井~近江長岡の撮影地。はじめはまた別の撮影地で撮る計画もあったのだが、信号線が新設されていたりと変化がありこちらに変更した。低い雲と時折強くなる雨に悩まされながら大勢のギャラリーの方々と通過を待った。朝の通勤客を乗せた列車が何本か通過した後、雨に濡れた線路をゆっくりとEF65-2139が客車たちを引き連れてやってきた。JR東海から電気機関車と客車がなくなって久しい中、東海管内を客車列車が甲種輸送とはいえ通過したことは特筆すべきことだろう。