ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.97 朝帰り

 鉄道車両は最近の軽量ステンレス車両やアルミ車両と呼ばれるような車両でも20トン以上の重さがある。一見骨組みだけに思えるコンテナ貨車ですら18トン以上ある。一般的な乗用車が1.5トン程度であることを考えればかなり重く感じられるのではないだろうか。だが、これだけの質量があっても自然の力には勝てないものだ。ひとたび強風となれば鉄道はたちまち徐行や運休を強いられることになる。過去には余部鉄橋列車転落事故や羽越本線特急脱線事故など風によって痛ましい事故が起こっている。

 琵琶湖の西岸を走る湖西線はその開通当時から比良山地より吹き降ろす局地風「比良おろし」に悩まされてきた。強風による運休は年間20回強に及ぶこともあり、1997年には比良駅に停車中だった18両編成の貨物列車のうち3両が脱線し横転する事故も起こっている。このため、JR西日本では2007年から強風で影響を受けやすい区間から優先的に防風壁を設置し、当該区間の運転規制風速の引き上げを始めた。今年までに和邇~北小松間の山側に防風壁が設置され、今年中にさらに近江中庄近江塩津間にも設置される計画になっている。今年防風壁の設置が予定されている近江中庄近江塩津のうち、近江中庄~マキノは野坂山地をバックに撮影できる湖西線の有名撮影地の一つである。設置されるのは山側なので特に問題ないように思えるかもしれないが、設置される防風壁は高さ2m程度、色は白と割と目立つ存在であり、これまでのようにすっきりと撮れるわけではなくなるのだ。

 梅雨入り宣言もされた後の6月14日、この日は梅雨とはなんのことやら青空が広がる天気だった。早朝に敦賀からDD51牽引のロングレール工臨返却、工9588レが運転されると聞いて友人たちに誘われるまま近江中庄へ赴いた。

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 小鳥たちのさえずりをBGMに朝露に濡れつつ構図を固め通過を待った。5時40分を少しまわったころ、マキノ方面から聞きなれたエンジン音がこだましてきた。澄み渡る青空の元、青々とした野坂山地を背景にDD51-1193に率いられてロンチキは京都に帰っていった。防風壁無しでこんな風景が撮れるのもあとわずか、なるべく多く記録していきたいところだ。