ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.128 夢物語

 平成最後の年となった今年7月、西日本は停滞した梅雨前線によって記録的豪雨に見舞われた。河川の氾濫や土砂崩れなどが西日本各地で相次ぎ、多数の死傷者をもだすことになった。特に岡山・広島地域の被害は深刻で、日本の大動脈たる山陽本線で土砂崩れや盛土流出が相次ぎ、長期運休を余儀なくされた。山陽本線が長期運休となることで最も問題となったのが本州対九州の東西物流の寸断である。JR貨物が1日に日本全国で輸送している貨物は約9万トンだが、うち約3万トンが山陽本線を経由して輸送されている。JR貨物では船やトラックによる代替輸送を行ったが確保できた輸送力はその1割程度だった。山陽本線が普通ならば山陰本線を迂回運転できないのか、という声も当初から少なからずあったが山陰本線でのJR貨物の営業免許は既になく、対応できる機関車、運転士の不足や線路状況などからも輸送力を確保するには到底能力不足で迂回運転は現実的ではないだろうというのが多くの人の意見だった。だが、昨今のトラックドライバー不足などの要因もあり少しでも輸送力を確保しなければならないという事情もあってか、JR貨物およびJR西日本伯備線山陰本線山口線を経由する迂回貨物輸送に着手することになった。確保できる輸送力は3万トンのうち1%にも満たないものだが、やらないよりは荷主への信頼へつながるという背景もあったのだろう。眉唾の夢物語という声すらあった山陰本線での迂回貨物輸送が実現することになった。

 8月からは後藤総合車両所所属のDD51を使用し乗務員の訓練が始まり、約1ヶ月近くの訓練の後、始発駅基準で8月28日からついに愛知機関区のDD51を使用しての山陰迂回貨物輸送が始まった。

 8月28日に名古屋を出た迂回貨物第1便は29日に伯備線に入り朝から山陰本線を下ることになっていた。29日は当初曇り予報だったのだが日が近づくにつれ予報が改善。28日夕方の予報をみて晴れを確信し広島の友人と大阪の友人に連絡を取り新大阪駅から最終の新幹線に飛び乗って迂回貨物撮影へ向かった。早朝伯備線内でEF64+DD51+貨物という送り込み編成を撮ったのち、山陰本線は小田~田儀の俯瞰へ向かった。

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 さすように鋭い日差しの中待つこと2時間。真っ青な日本海と遠景の島根半島をバックに軽やかに赤いDD51がコンテナ車を引き連れてやってきた。シャッターを押す手がこんなにも重く感じられたのはいつぶりだろうか。暑さも忘れてシャッターを切った。