ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.150 五山送り火

 8月の京都で一大イベントといえば、五山送り火である。五山送り火の中で最も標高が高い位置にあるのが、如意ケ嶽にともされる大文字(右大文字)だ。それゆえ、京都市内の広い範囲で見ることができる。更にいえば、京都の市街地中心部が碁盤の目になっていることや景観条例による建築物の高さ規制も手伝って、離れていてもかなり見やすい場所が多く存在する。ただ、鉄道と絡めて撮影するとなると、これが実は案外該当する場所がない。そんな数少ない場所の一つが、京福電鉄 北野線の馬代通り踏切である。馬代通り踏切から東を向くと、ちょうど北野白梅町駅1番線に停車する電車の左上に大文字の文字が浮かび上がる構図になる。これは京都の鉄道ファン界隈では割と有名で、私としてもそのうち記録したいと思っていた構図だった。すると昨年、突如として北野白梅町駅が今までの3面2線の頭端式構造から2面1線の駅に改修されることが発表された。問題だったのは、2面1線になる上で、今までメインで使われていた1番線が撤去され、2番線のみとなるという点だった。なぜなら、馬代通り踏切から東を向いた際、2番線はちょうど架線柱やその他構造物に隠されて車両が見えなくなってしまうからだ。改修は2019年11月に始まるというこれまた急な話であったので、突然の見納め宣言であった。

 この機を逃してはいけないと、夏真っ盛りの8月16日、京の夜に繰り出した。普段はほとんどギャラリーのいない馬代通り踏切も、この日ばかりは見納めをしようと多くのファンが駆け付けていた。20時ちょうど、如意ケ嶽の大文字に火が入った。五山送り火は一度点火されると20分程度しか火が持たないため時間との勝負になる。

京福電鉄 北野白梅町駅

 1本目の列車で構図を確認し、2本目の列車が北野白梅町駅のホームに入ると同時にすぐさま構図を作りシャッターを開けた。したたり落ちる汗を拭きながら夏の夜空に浮かび上がる「大」の字と消えゆく北野白梅町駅を記憶に納めた。