ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.149 第一只見

 日本の豪雪地帯はどこか?と聞かれたら、「それは勿論北海道だろう」と答える人も少なからずいることだろう。だが実際には、年間平均降雪量・最深積雪量ともに上位にくるのは北海道以外の地域のほうが多いのだ。どちらかといえば、北海道よりも長野や新潟、福島、山形といった信越地方や東北地方のほうが多く上位にランクインするのである。

 そんな豪雪地帯のひとつが福島県の只見地方である。只見地方の年間平均降雪量は1294cmであり、11月頭から3月末までの150日間にこの量が降っていると仮定した場合、一日あたり約9cm弱降雪していることになる。こういわれるといかに降雪量が多いか少しばかり実感していただけるだろうか。

 降ったからにはその分の水はどこかにいかねばならない。降雪量が多いということはつまりその土地が含むことになる水の量もまた多いということだ。その水は地下水や河川の水となって土地を耕していく。只見川はそうした豊富な雪解け水が生み出した川なのである。山間をゆっくりと流れるエメラルドグリーンの川面は谷間に敷かれた鏡のように周りの景色を複製し景色に更なる奥行きを持たせている。

 JR只見線はこの絶景の中を走る風光明媚路線であり、列車は只見川を渡ったり並走したりを繰り返し走り抜けてゆく。只見線の中でも随一の名所が会津桧原会津西方駅間にかかる第一只見川橋梁である。鉄道橋梁というとトラス橋やガーター橋であることが多い中、ここは珍しくトラスアーチ橋となっており只見川に橋脚を設けず一気に渡りきっている。これこそが、この橋梁を景勝地たらせている理由だ。

 初夏になると、只見川一帯は川霧が出ることで有名だ。この時期に合わせて、友人と間もなく引退すると予告されていたキハ40系の見納めも兼ねて第一只見川橋梁の俯瞰撮影地へ向かうこととなった。只見線 会津桧原~会津西方 第一只見川橋梁

 7月15日、夜な夜な車を走らせたどり着いた会津西方では狙い通り川霧が出ていた。夜明け少しして会津西方の道の駅の脇から伸びる遊歩道を登り、撮影地にスタンバイ。意気揚々と列車を待ったまでは良かったが、ここから風向きが悪くなり眼下の第一橋梁は濃霧の中へと姿を隠してしまった。濃霧の中、朝の一本目の列車は音だけを我々に響かせて走っていってしまった。そこから待つこと1時間強。霧が晴れだしたころに会津川口行の列車がキハ40系2両編成でとことことやってきた。一面の川霧とはいかなかったが川面に張り付く薄霧と息吹く山霧の中にこだまするディーゼル音をコマに納めることができた。今後も車両は移り変わっていくだろうが、この絶景は変わらずにいてほしいものだ。