ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.147 原色三昧

 普通の人にとっては、原色といえば赤、青、緑のような光の三原色などをイメージするだろう。だが、鉄道ファンにとって「原色」というワードは少しばかり特別な意味を持つ。鉄道ファンにとって原色とは、ある車両が登場したその時の塗装を意味する。

鉄道車両は、多くの場合10年単位での使用がされるため内外装ともに経年で劣化していく。もちろん塗装については定期的に塗りなおしが行われるわけだが、10年単位ともなれば、定期的に修繕や更新工事が行われたり、はたまた他社、他地域への転属が発生したりする。これらの節目に合わせて、イメージ刷新狙い塗装が変更されることが多々ある。そうすると、いわゆる「原色」は”しばらく”または永遠に見納めとなるのである。しかし、往々にして、復刻イベントや引退記念、はたまた塗料在庫の都合などで原色塗装が復活することがある。そうともなれば、一大事、ひとたび晴天で撮影に好都合な運用ともなれば沿線に多くのギャラリーが繰り出すわけである。

 梅雨も間近に迫った昨年5月26日、友人に誘われて伊豆半島方面へと繰り出した。なぜかといえば、この日の朝東海道線を上ってくる5086レを”原色”のEF65が引いてくるからであった。JR貨物EF65は長らくほとんどが貨物更新色の装いをしていたが、残存全機が更新工事を終えた更新機のみとなったため、わざわざ更新機と未更新機を区別する必要がなくなり原色に戻されることになったと聞いた。一部の人からすれば古臭い塗装かもしれないが、我々鉄道ファンにとってすればありがたい話である。

EF65-2096 5086レ

 東海道本線の名撮影地、石橋のトンネル飛び出しカーブでEF65-2096牽引の5086レを迎撃。朝の光線でクリームと青のツートン塗装がよく映えた。JR西や一部JR東のスノープロー未装備機と比べるとやはりスロープローが装備されているだけあって足元が引き締まって見える。

 5086レを撮影後は、箱根登山鉄道へと向かった。引退間近といわれている旧型車たちを撮らねばと張り込んだのだが、どうやら午前中は運用に入っていない模様だった。しかたあるまいと、ここは別の”原色”を求めて伊豆半島を南下。伊豆急行線伊豆稲取の俯瞰へと駒を進めた。伊豆といえば、”踊り子”である。特急踊り子に使用される大宮所属の185系は数年前から登場時塗装であるホワイトにグリーンのストライプの装いに復刻されている。新型車両の導入も迫る中、撮りにいかないという手はない。

185系 踊り子105号 伊豆稲取

 晴れると太平洋は色がまこと素晴らしい。山と海の間を縫って踊り子185系がやってきた。登場当時、それまでのクリームと赤の国鉄特急色とは一線を画したこのグリーンストライプ塗装。登場から40年弱たつ今見ても色あせない斬新さだ。

 伊豆稲取で撮影した後は少々ほかの撮影地にも寄り道しつつ、箱根登山鉄道へ再度戻ることにした。午前中訪問時にこの日の運用を調べた際に、どうやら夕方あたりから旧型車たちが動くらしいという情報を得ていたからだ。

箱根登山鉄道モハ2形109号

 国道1号線を車で北上していると、小涌谷箱根登山鉄道の線路をまたいだ。どうやらこの踏切からなら少しばかり撮れそうだ。とりあえず運用確認がてら撮影しておくか、ということで友人と車を止めて撮影に向かうとすぐに踏切がなって、強羅行きの電車がやってきた。するとどうだろう、やってきたのは開通100周年記念で登場当時の緑の”原色”に復刻された109号を先頭にした編成だった。緑に塗られたその姿はどこかしらかつての東急の旧型車にも見える。新緑をバックに深いグリーンがいい味を出してくれた。この後もしばし箱根登山鉄道で撮影し、日が落ち始めるころ帰路へとついた。”原色”浪漫を満喫できた充実の休日であった。

 現在箱根登山鉄道は令和元年東日本台風による被害で運休が続いている。つい先日、今年秋ごろの暫定復旧を見込んでいるとの発表があったが、暫定復旧後も被害が甚大であった区間の新線付け替えなどが続くと聞き及んでいる。長い道のりだろうが、一日も早い完全復活を願うばかりである。