ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.133 カルストの崖

 地理の授業を受けたことがる方でなくとも「カルスト地形」という名称を一度は聞いたことがある方は多いかと思う。カルスト地形の「カルスト」という名の由来はスロベニア西南部およびイタリア北東部のクラス地方が語源である。というよりも、そもそもこのカルスト地形というのはこのクラス地方で見られる石灰岩質の地形から生まれた地理用語なのである。石灰岩は風化こそしにくいが雨水によって浸食されるため石灰岩質の土地では浸食によって陥没地や崖、鍾乳洞など様々な地形を生まれる。それらこそがカルスト地形なのである。さてこのカルスト、クラス地方、ずばり今回の欧州遠征で訪問したPrešnica–Koper線のČrnotiče~Hrastovlje駅間もその一部なのである。前回および前々回(Report No.132 ブリジット - ぽっぽ屋備忘録 Report No.131 断崖絶壁の生命線 - ぽっぽ屋備忘録)でお伝えしたこれら急峻な地形は石灰岩が大きな要因となっているのである。

さて、今回はReport No.132の続き、この峠区間での撮影のフィナーレとなるレポートである。この日は午後を通してアドリア海側は突き抜けるような青空で太陽光線が痛いほどだった。午前中から午後にかけて少なくとも5機のゲンコツことSŽ363がKoper港へと下っていたが再び峠を登ってきたのは2両のみであった。SŽ363は首都リュブリャナに配置されている機関車でありKoperに下ったからには帰ってこなくてはならない。そこで、晴れが続いていることもあり、撮影を続行することになった。かなり日が西に傾いてきたこともあり、順光であるČrnotiče駅近くの崖下S字俯瞰へと向かった。林道を抜けて崖っぷちへたどり着いてセッティング。下り列車が何本か通過したが一向にのぼり列車がやってこない。まだまだ日が落ちるわけでないのはわかっているがあまり太陽が西に傾きすぎると自分たちが陣を張っている崖の影が線路へ落ちてしまう。伸びてくる影におびえながら待っていると麓からもはや聞きなれた重低音が響いてきた。はるか眼下の林の隙間に目を凝らすとゲンコツがコンテナ貨物を率いているのが見えた。

f:id:limited_exp:20181006004310j:plain

 それから10分近くたっただろうか。夕日に赤く染まった石灰岩の崖のすそを縫うように走るコンテナ貨物。茜色に染まったゲンコツがその鼻っつらを浮かび上がらせながら先頭を務める。この区間での撮影を締めくくるにふさわしい感嘆のため息が止まらない1コマとなった。