ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.118 ゴッタルド峠

 アルプスの山々に囲まれたスイスには数多くの峠が存在するが、その中でも有名なのが南部のイタリア方面へ抜ける途中にあるゴッタルド峠だ。かつてはこの峠を越えようとして遭難するものも多く、13世紀ごろまでは道も険しく主要路としては機能していなかった。特に両岸が断崖絶壁となっているロイス川を渡るのがかなりの困難で、ロイス川を渡る石橋が「悪魔の橋」と呼ばれており、悪魔と契約して作ったという俗話が残っているほどだ。

 このように険しいゴッタルド峠なのだが、スイス・チューリッヒからイタリア・ミラノ方面へ抜けるためにはここを抜けるのが最短ルートになっている。1888年には、多大なる殉職者を出したゴッタルド鉄道トンネルが開通し、スイスとイタリアをスムーズに鉄道で結ぶことができるようになり物流を大きく変えた。その後、1980年にはゴッタルド道路トンネルが開通し着実に交通の要衝としてゴッタルド峠一帯は重要度を増していった。

 そして、更なる輸送の高速化、効率化を目指すため、既存のゴッタルド鉄道線をアルプスの山々を貫く長大トンネル線で置き換えることになった。険しい勾配を克服するため、ループ線が連続するこの区間は速度向上が難しく、近年の物流量の増加に対して限界を迎えていたこと、環境保護のため鉄道貨物の利用増加が求められていたことから、高速で輸送可能な平坦な路線が求められていたのだ。そこで、全長57キロからなるゴッタルドベーストンネルをアルプスの峰々を貫いて建設することでこれを解決しようとしたのだ。1996年から始まった建設であったが、難工事の末20年近くたった2015年に完成をみた。そして2016年には営業運転が開始され、ゴッタルド峠を通過する列車の大部分がゴッタルドベーストンネルを通過するようになった。旧線は廃線とならず、現在も使用されているが、トンネル開通後はローカル電車と観光列車、ごく少数の貨物列車のみとなっている。昨年初秋に渡欧した際、ゴッタルド峠にはVSOEを撮影しに訪問した(Report No.104 走る舞台 - ぽっぽ屋備忘録)。このとき、VSOEが通過する前に数少ない貨物列車を撮影することができた。f:id:limited_exp:20180206231218j:plain

 まだ山影から太陽が昇る1時間ほど前、重々しい電機の唸りが聞こえたかと思うと、Re4/4(現Re420)とRe6/6(現Re620)の異種重連、通称Re10/10に牽引されてホッパ車たちが峠を登ってきた。先頭のRe4/4がシール式前面車番に変更されいることや次位のRe6/6がXrail塗装なのが些か気になるところではあるが日本ではなかなかお目にかかることのできない電機罐の異種重連運用に胸躍らせシャッターを切った。