ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.100 復刻

 SLやまぐち号には永らく、12系客車を改造したレトロ調車両が用いられてきた。しかし、使用されている12系は、最も新しいものでも1971年製であり車齢は46年を超えている。車齢46年ともなれば、経年による老朽化は深刻で、近々置換計画が持ち上がるのではないかと常々言われていた。2015年3月30日、ついにその置換計画が発表された。置換計画には「旧型客車を復刻した客車を新製投入する」とあり、「新型旧型客車」なる不可思議な言葉がファンの間でささやかれるようになった。発表から丸2年と少しが過ぎた2017年6月、ついにその「新型旧型客車」が新潟トランシスから出場した。新型旧型客車の形式は35系とされ、かつての国鉄オハ35系のオマージュになっていた。最近のJR西日本の車両と同様のクーラーを搭載していたり、ボルスタレス台車を履いていたりするものの、ぱっと見は旧型客車にしか見えない仕上がりになっており、平成の時代にとんでもないものが誕生したのだと実感した。

 無論、新型車両であるので、走行する線区を中心に試運転が行われることは明白であり、山口線で試運転ともなれば下関に所属するDD51-1043が牽引することになるのではないかと期待していた。DD51-1043はJR西日本に所属するDD51のうち唯一の中期型の機関車である。一番の特徴は側面のラジエーターカバーが3分割メッシュになっていることなのだが、実は1エンド側前面にも特徴がある。中期型は通常、解放テコのとりまわしが前面手すり内側(車体側)になっているのだが、1043号機は1エンドの非公式側手すりが後期型のものに変更されており、車体左右で解放テコの取り回しが異なっている。他にも最近ではテールライトがクリアテールに変更されたこともあり、現存するDD51の中でもかなり異質な機関車になっている。

 そんなDD51-1043による35系試運転の予想は的中。知人から6月26日にDD51-1043牽引で山口線試運転が行われるとの情報を得て、友人たちと一路西へ下った。当日の予報はあいにくの曇り。だが、山口線のSLやまぐちで有名な撮影地の多くは逆光であるので、この際少しくらい曇りのほうが都合がよかった。まず最初に陣を張ったのは宮野~仁保の大山路踏切。早朝から多くのファンが詰めかける中、知人や友人たちと和気藹々と談笑しながら通過を待った。

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 晴れると逆光のこの撮影地、今日ばかりは曇り空がありがたかった。少ししわがれたような哀愁漂う警笛を鳴らしながらDD51-1043に率いられて35系新型旧型客車がやってきた。クーラーを目立たないように撮ってみると本当に国鉄時代にタイムスリップしたような不思議な感覚になった。

 大山路で撮影後はすぐに撤収、次の撮影地に急いだ。あまり停車のないダイヤでの運行だったので当初は徳佐周辺まで行って撮る予定だったのだが、どうやら撤収が早かったこともあって長門峡手前で追い抜くことができた。長門峡周辺は突如として青空が一部広がっており、晴れならば順光になる長門峡へ行くしかないと即断、急きょ予定変更し鉄橋の撮影地へ。

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 いかにも梅雨といったところの湿っぽい晴れ間を縫って旧型客車列車がやってきた。クーラーが屋根に対して1段低く設置されていることもあってか側面気味に撮ってもさほど目立たずなかなかサマになっている。機関車次位がダブルルーフ風展望車というのもこれまたかっこよさを演出してくれている。この後も津和野方面まで追走し、返却も撮影したのだが、運よく晴れた長門峡のカットが一番感慨深かった。