ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.90 オイラン列車

 最近だとオイランと言われてもなかなかオイランが何なのかわからないという人が多いのではないだろうか。漢字で書くと花魁となりこれまた難読だ。花魁とはかつて存在した吉原遊郭の遊女で高位の者を指す言葉だった。つまるところ、早い話が現代でいう風俗街の高級娼婦、キャバレー嬢と言ったところか。花魁は髪を飾るのに大きな目立つかんざしをいくつもしたり派手な着物で着飾ったりしていたそうだ。

 さてさて、ではオイラン列車とはなんぞや、という話なのだが、花魁専用列車という意味ではない。あくまでその特殊な機能からそう呼ばれているだけである。オイラン列車の正体、それは国鉄時代に簡易食堂車からの改造で誕生した建築限界測定車、オヤ31である。鉄道を安全に運行する上で、車両が架線柱や標識、トンネルなど線路沿いの構造物、建築物に接触することがあってはいけない。路線が新たに開業する際や線路移設工事、電化、災害復旧などが行われた際に干渉しないか安全性を確認するための車両がオヤ31である。検測時は車両から可動式の矢羽根がいくつも突き出してくる。この矢羽根にモノが当たればアウト、当たらなければセーフという具合に検測していく。その矢羽根を突き出した姿がかんざしをさした花魁のようだから、という理由でオイラン列車と呼ばれるようになったのだ。

 現在、JR線上に残っているオヤ31はJR西日本に所属するオヤ31-31とJR北海道に所属するオヤ31-32のみである。そして実質現役として残っているのはオヤ31-31のみ。それも近年では全般検査など実施される際に回送されるのみで実際の検測走行はしばらく行われていない。それでも、いつでも検測走行できるようにと車齢70年近くにもなって維持されている。

 そんなオヤ31-31だが、2015年の網干総合車両所一般公開で、唯一の現役旧型客車展望車マイテ49-2と共に一般展示されることになった。オヤ31、マイテ49ともに所属地の宮原から網干までDD51牽引で日中回送される、との情報を得て大阪方面へ急行。あいにくの曇り空ではあったが、それ以上に久々のオヤ31の本線走行を被りをなるべく気にせず撮れるところというのを意識した結果、加島陸橋で撮影することにした。陸橋に着くとちょうど知り合いがおり、横を譲ってもらって設営。道路橋に併設された歩道なのでトラックなど大型車が通るたびに揺れること揺れること。低い側壁に少し恐怖心を覚えながら通過を待った。

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 30分ほど待ったあと、DD51-1192に引き連れられてマイテ49-2、オヤ31-31の順に連結された回送列車がやってきた。検測車と一等車が併結されているというのもまた妙な組み合わせではあるがこれまた次いつあるともわからない貴重な組み合わせでもある。またいつか、次はぜひ検測時に撮影してみたいものだ。