ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.46 山あり谷あり

 山陰本線というと、かつては鈍足な機関車に牽かれた貨客車と気動車が闊歩していた路線であったが、電化・高速化事業によって一部区間で線路の付け替え、電化が行われ、今や京都口では電車が5~10分間隔で往来する路線となった。高速化事業で線路付け替えとなった区間の一つが嵯峨嵐山~馬堀の区間である。この区間は、保津川が切り立った山間を蛇行して流れているため、旧線では谷をなぞるように斜面に線路が据え付けられており、急カーブの続く高速化を阻む区間であった。そこで、新線ではこの区間を山を直線的に貫くトンネルと川をまたぐ橋で結ぶことによって線形改良を行った。これに伴って、保津峡駅が移設されることになったのだが、新線は山を貫く形で敷設されることになったので、川の上、つまり橋上に設置することになった。この結果、新線保津峡駅はトンネルとトンネルの間の橋上に配置される珍しい形態の駅となった。

 保津峡駅はこのように全国的に見ても特殊な駅なのだが、特殊であるがゆえに、いわゆる”トンネル抜き”が撮影できる。289系による381系の置き換えが発表された当時、どこか山陰本線京都口らしい画が撮れないかと考えた結果、思いついたのがこの付け替え区間だった。梅雨真っただ中の2015年6月21日、この日はちょうど暇を持て余しており雨でもなかったので保津峡駅へ出向いてみることにした。

 トンネル抜きが可能なのは保津峡駅馬堀側、トンネルの長さは635m、APS-Cカメラで望遠500mmを飛ばしてやっとである。被写体までの距離が遠く読みにくいピントの山と格闘しセッティング完了。あとは京都方面へのきのさき運用につく381系を待つばかりである。

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 きのさきの通過直前、観光客の乗降過多で少し遅れていた普通列車221系保津峡駅を発車。221系が一つ目のトンネルを抜けようかという時、馬堀側のトンネルがきらりと照らし出され暗闇から381系がやってきた。国鉄色の381系とトンネルへ消える221系更新車の一瞬の邂逅。381系の末期を物語る山陰本線京都口らしい画を記録できた。