ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.45 冬支度

 本州の日本海側というと、冬には豪雪となる地方が多いことで有名である。豪雪地帯対策特別措置法によって、全域が豪雪地帯に設定されている道・県を見ると、北海道、青森、岩手、秋田、山形、新潟、富山、石川、福井、鳥取となっており、岩手県を除きすべてが日本海に面した地域を持っている道県である。これは、冬になると、日本列島北西から日本海の湿気を含んだ季節風が吹き込むためであり、世界の豪雪地帯に比べて低緯度ながら積雪は3m以上に達することさえある。

 鉄道にとって、雪害は重大な問題である。粘着式鉄道は、鋼鉄の車輪と鋼鉄のレールの間に生じる静摩擦力をもって走行するわけだが、鋼鉄同士の間に生じる静止摩擦は非常に小さいため、レールと車輪が濡れてしまったり油で汚れてしまうだけでも力が小さくなり、スリップすることになってしまう。さらには、積雪となれば、列車は雪をはねのけて走行しなければならないわけだが、ただでさえ摩擦力が低下するのに加えて、雪を跳ね除けて走行するとなると、一定以上の積雪では駆動力が不足し立往生してしまうことになる。

 粘着式鉄道は転がり抵抗が小さいため、エネルギー損失が少ない半面、このような一面もあるため、以上のように雪害の影響は非常に大きい。そこで、鉄道では雪かき車を用いてあらかじめ除雪するという手法が取られている。雪かき車にはさまざまな種類があるが、その中でも最も一般的と言えるのがラッセル車だろう。前面に設置された排雪板で雪を線路の片側もしくは両側に排雪するというものである。

 ラッセル車の配置されている線区では、本格的な冬を前に、普段は車庫の肥やしとなっているラッセル車の試運転が行われる。友人から、2015/11/27に山陰本線豊岡~東浜の区間でDE15形ラッセル車の試運転が行われることを聞き、友人らで日本海側へ赴いた。試運転日、まだ紅葉残る中襲来した嵐で昼前からは時たまみぞれが降っていた。朝、浜田周辺で撮影した後、東浜で折り返してくる復路を鎧の袖俯瞰で撮ろうと砂利道とみぞれで滑りやすくなった山道を歩いた。

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 先遣隊として行った友人らに場所を見繕ってもらい、しばし友人の車で休息をとったのち俯瞰へと向かった。鎧の袖俯瞰についてみると日本海は荒れに荒れており飛沫で海が白んで見えるほどだった。まだ山は紅く彩られているが海はすっかり冬支度を整えていた。しばらくして山と海の間の線路に赤いラッセルが、ラッセルウイングを開いてやってきた。山陰本線の冬はこれからだ。

 国鉄時代は豪雪地帯の路線といえばラッセル車としてDE15やDD16などの機関車が必ずと言っていいほど配置されていたのだが、温暖化による降雪量の減少、車両の老朽化や保線用モーターカーへの置き換えなどから数を減らしつつある。あと何年、この風景を拝めるだろうか。