ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.28 蝦夷富士は晴れているか

蝦夷富士とは羊蹄山の別名である。標高1898mと富士山には到底及ばない高さだが、富士山に似たその円錐状の形が由来である。またアイヌ語ではマッカリヌプリやマチネシリと呼ばれる。時折函館本線”山線”で運転される臨時特急ヌプリ号の名もここからきている。

さて、函館本線長万部より海側を離れ山中へ入っていき、ニセコ、小樽など風光明媚な地域を経由して札幌へと向かうわけだが、その中でも屈指の名所と言っても過言ではないのがこの羊蹄山である。しかし、地理的に非常に雲が発生しやすいため、完全に晴れている羊蹄山を拝むことは難しい。

9月、北海道へ遠征した際にSLニセコの廃止が発表されていたため、北斗星を撮った後SLニセコを撮影するため山線へ転戦した。銀山や蘭越といった有名どころで撮影した後、最後のシメとして晴れに一縷の望みをかけて羊蹄山バックの北四線踏切へ向かった。撮影地についてみれば北斗星とは比べ物にならないほどのびっくりするほどのファンの数で、もはや三脚が山のようになっていた。三脚と三脚の間の小さな隙間を譲っていただき、雲の行方を見つつ通過を待った。

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通過時刻が迫るにつれて山頂付近にあった雲は千切れていき、残るは山の中腹左端に残る雲だけとなった。すると踏切が鳴り、遠くからC11-207の力強く長い汽笛が轟いた。暮れ行く西日の中、特徴的な2つ目を光らせて黒煙と共にC11-207に連れられて旧型客車と後補機たちがやってきた。その力強い快走っぷりをファインダーに収めてみれば、ちょうど山の中腹の雲を黒煙が隠してくれていた。”晴れの羊蹄山”という少しうれしい誤算であった。