ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.27 夕焼けの国鉄色

福知山電車区に所属していた381系は、末期、閑散期4両、繁盛期6両という設定で運転されていた。基本編成は6両だが、中間のモハユニット2両を抜いて4両で運転するという形である。287系や、かつて在籍した183系では4両および3両編成が存在し、まいづるはしだてなどの列車の分割併合を行う運用があったが、381系は中間運転台なしの6両編成のため単独運用の列車のみに使用されていた。

初秋の太陽がまだ高い9月19日、午前の運用状況から夕方の”きのさき13号”が6両であると予想し、まだこの日なら山に太陽は沈まないだろうと保津峡~馬堀のカーブへ出向いた。このカーブは6両編成ならちょうど最後尾まですっきりと撮れるのだが、時期によって太陽方位および高度の関係から車体に対向線の架線影が車体にかかってしまうため「賞味期限」が短い撮影地である。

撮影地についてみれば、先客はおらず少し肌寒い風が吹く中設営。しかし、しばらくして到着時にはなかった雲が流れてきた。到着時から雲が多い日であったので、半ば運試しのようなつもりで来た部分はあったのだが、それでも撮るからには晴れてほしいと字のごとく天にも祈る気持ちだった。刻々と迫る中、雲は山頂付近を埋め尽くし太陽は無情にも雲海の裏で山に沈むかと思われた。

f:id:limited_exp:20160507213659j:plain

しかし祈りが通じたのだろうか。山頂付近の雲海と山の間の少しの隙間から鋭い西日がカーブを真っ赤に浮かび上がらせた。同時にトンネルの中からはうなるモーター音、朱に染まるカーブを国鉄色381系がしなやかに体を曲げて駆け抜けていった。

通過数秒後、太陽は山の向こうへと没した。まさに一瞬の幻のようであった。