ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.143 ドナウの真珠

 オリエント急行といえば、『オリエント急行の殺人』や『007 ロシアより愛をこめて』で登場した、フランス・カレーとトルコ・イスタンブルを結ぶ便が一番有名ではないだろうか。オリエント急行はいくつもの列車の総称であり、「オリエント急行」、「バルト・オリエント急行」、「シンプロン・オリエント急行」などの名前でさまざまな行き先があった。そしてこれら”オリエント急行”の多くが経由していた都市のひとつがハンガリーの首都、ドナウの真珠と名高いブダペストである。

 ブダペストは西暦100年ごろから最初はローマ帝国の都市として栄えはじめた。その後は、モンゴル系のタタールの侵略、オスマン帝国による支配、ハプスブルグ帝国への併合、オーストリアとの二重帝国等々、時代ごとにアジア系とヨーロッパ系のはざまで揺れ動いたハンガリーの首都として発展してきた。特にオーストリア=ハンガリー帝国時代に一大発展を遂げたこともあり、街並みはヨーロッパそのものである。かと思えば、ハンガリー語インド・ヨーロッパ語族には属しておらず、ウラル語族に属しているため、人名の表記がアジアでよく見られる姓・名の順であることや日本語でいう「てにをは」に近い概念があるなど、アジアのような側面もある。ハンガリーブダペストはまさに、東方(オリエント)への旅をうたったオリエント急行にはうってつけの都市なのである。

 現在、定期列車としてのオリエント急行ブダペストへの乗り入れはないが、Belmond社が運行するVeice Simplon-Orient Expressの特別便として年1、2回ヴェネツィアブダペスト間の運行が設定されている。2019年は5月2日ブダペスト着で設定がされており、GW遠征の合間に撮影すべくプラハからブダペストへと簡易寝台に揺られながら向かったのだった。

 ブダペスト行の終点はBudapest Nyugati(ブダペスト西)駅である。西駅は東側からしか入線できない構造になっているため、西方から来た列車は、ドナウ川のほとりのKelenföld駅を経由しドナウ川を渡り、回送線を使ってブダペスト市内をぐるっと回りこんで西駅へと入線する。そこでブダペスト西駅の一駅手前、Rákosrendező駅北の回送線から入線してくると読んで、回送線で撮れそうだと見込んでいたポイントに張り込んだ。列車の到着予定は14時半ごろ。事前情報ではKelenföldから西駅までは保存蒸気機関車による牽引という話であった。

Venice Simplon-Orient-Express Budapest

  プラハからの同行者と撮影地で待つこと数時間。数少ない回送線経由の列車で構図を確認しつつ待ったが予定の時間になってもこない。ひょっとしてこれは経路を間違ったのか?と思ったが、Kelenföld以西で撮影している知り合いからまだ通過してないとの報。どうやら遅延しているようだった。そして定刻遅れること約1時間。ついにCIWL客車がやってきた。だが牽引機がヘンだ。遅延の影響なのか、ハンガリー国鉄所有のサッカー・ハンガリー代表チームラッピングのタウルスがオリエント急行を引いてきた。若干残念な部分もあったが、ハンガリー代表チームラッピングとあっては蒸気機関車よりも”ハンガリー”感がでるのもまた事実で、複雑な気持ちであった。次回撮影の際はぜひとも蒸気機関車牽引で来ていただきたいものだ。