ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.137 遠戚

 国鉄DD54ディーゼル機関車といえば、かつて欠陥機関車とあだ名され、法定耐用年数の18年を満たさずして引退した曰く付き機関車である。DD54は当時西ドイツで既に実用化されていたV160形ディーゼル機関車の設計を元に開発されたものだった。だが、実際に運用開始してみると、他形式と一部設計を共通化したことや当時の日本の製造技術、保守技術に対してオーバースペックであったことに起因して悪名高い推進軸破損落下事故、所謂「棒高跳び」事故を起こしたり、変速機の故障を引き起こしたりするなどの不具合が相次いでしまった。これら不具合もあって、DD54は前述のように早期引退ということになってしまったのだが、ドイツ本国ではV160形が大きく成功をおさめ、少しずつ数を減らしているがいまだに現役で活躍している。

  現在ドイツ周辺で運用されているV160形ファミリーの大多数は218形と呼ばれるタイプのものである。218形の現在の主戦場はドイツ南部バイエルン州とドイツ北部ハンブルグ周辺の2つである。特に、バイエルン州で運用されている218形はスイス方面への国際列車の牽引に使用され花形運用を保っている。だが、近年ドイツでは既存路線の電化・高速化工事が進んでおり、この218形牽引のスイス国際列車が走る経路も一昨年より電化工事が開始された。この電化工事に伴って国際列車の走行経路が通常は経由しない曲線の多い非電化亜幹線Allgäu線に迂回されることになった。この迂回国際列車を記録するため、昨年の欧州遠征にてドイツ南部はLindauを起点に撮影に向かった。

 この線区は人よりも牛のほうが多いのではないかと思うほど畜産が盛んな地域で、多くの駅が廃止されてしまっているため、撮影地まで最寄り駅から5km以上というのがザラという状況になっている。そこで、Lindauで友人らとレンタサイクルを借りて列車で輪行して最寄り駅Röthenbachからほかの列車も撮影しつつサイクリングをすることにした。これが一番楽だと思っていたのだが、このあたりは緩やかな丘が延々と続くアップダウンの激しい区間で思いのほか汗だくになってしまった。

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 1時間強かけて到着したOberthalhofenの撮影地で狙うはスイスからの国際列車EC195 ミュンヘン行。のどかな放牧風景や行きかうローカル列車を眺めること2時間。定刻より20分ほど遅延して218重連に引き連れられて1等展望車を含むスイス客車8両のEC195がやってきた。DD54の遠戚にあたる赤い機関車の重低音と赤帯美しいスイス連邦鉄道客車、なんとも素晴らしい情景をドイツで堪能することができた。