ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.136 箱庭

 夏によく聞かれる定番の質問といえば「行くべきは海か山か」ではないだろうか。海にも山にもそれぞれの魅力がありなかなか決めることのできない難問だ。鉄道写真でも海を背景にするか山を背景にするか、というのは定番の議題だろう。昨年の山陰本線迂回貨物でもこれは大きな議題の一つだった。だが山陰本線のよいところは、海も山も背景にできる撮影地が数多く存在していることだ。そのうちの一つ、五十猛~仁万の俯瞰でのカットは山陰迂回貨物でぜひとも押さえたいものの一つだった。遠景に島根半島の山々を望み、手前には白い砂浜と緑の築堤と、さながら鉄道模型ジオラマのような”箱庭”情景をDD51が牽引する貨物列車が走るわけなのだからファンとしては垂涎の情景である。

 五十猛~仁万で撮影するチャンスは意外と早く訪れた。運転が開始された4日後の9月2日、友人が有給をとって山陰迂回に行くということでこれに便乗させて山陰へ向かった。1発目を日原俯瞰で”山”を主題におさえていたので2発目は満を持しての五十猛での撮影となった。五十猛の撮影に着くと既に鈴なりの人出で立ち位置を見つけるにも一苦労のあり様だった。なんとか最上段付近で場所を確保し照り付ける夏の太陽を浴びながら小一時間列車を待つ。待っている間にもどんどんとギャラリーは増え、ついには撮影地背後の木に登って撮るギャラリーまで現れ始めるほどで、この迂回貨物の注目度を如実に表していた。

f:id:limited_exp:20181006000949j:plain

 この日は上りが少々遅れていたこともあり、交換の都合で下りにも遅れが波及していた。定刻より少し遅れて、快晴の下、赤いDD51につれられてコンテナ貨物が軽やかにフレームに滑り込んできた。夏の白波を横目に山を望みながら走りゆくその姿を何度を肉眼に焼き付けながらシャッターを押した。