ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.124 弾丸機関車

 日本で新幹線が産声を上げた翌年、当時の西ドイツで最高速度時速200キロでの運転を目指して試作新型電気機関車E03型が開発された。E03型は4両が製造され、1965年から5年間営業運転を含む実地試験を行った。そしてその実績を踏まえて投入されたのが量産車である103型だ。流麗な流線形のフォルムはまさに弾丸列車ならぬ弾丸機関車のようだ。103型は当時のTEE(Trans Europ Express)やIC(Inter City)を中心に運用され、ICE登場まで西ドイツ国鉄の雄として活躍した。だが、その後は後継となる機関車の登場やドイツ版弾丸列車ICEの登場もあり1996年ごろから引退が始まっていった。そして2003年にはついに定期営業運転を終了し、その後は博物館の展示物になるかと思われた。

 だが、そうはならないのが欧州である。ドイツをはじめ欧州では、機械遺産に対する考えが成熟しており、蒸気機関車に限らず車両の動態保存が活発であり、電気機関車も例外ではない。更には動態保存といっても日本のようにローカル線などで細々と臨時列車を牽引する程度の動態保存ではなく、きちんと幹線を走行できるように整備し、定期列車で動態保存運転を行っているのだ。103型はその華々しい歴史と性能から現在も動態保存されており、つい数年前まで定期列車のICで動態保存運転されていた。

 ドイツに行くからには103型が撮りたい、と思っていたが昨年訪欧した際には定期ICでの運転は終了しており、重検査に入っていたり博物館でしばしの静態展示となっており望み薄に思えた。しかし、ドイツ到着後2日目、突如動態保存機103-245がウルム発ミュンヘン行きの早朝のIC2097で運転されるという情報が飛び込んできた。これはなんとしても撮らねばならぬとネットで地図とにらめっこし、撮影地を探した。ギュンツブルクを出て少し行ったところのストレートならば、日が出れば順光で撮れそうとふんで、フランクフルトから夜行ICEに飛び乗って早朝ギュンツブルクに着いた。そこから普通電車に乗り継ぎ撮影地最寄り駅へ。降りてみてびっくり、ただホームと申し訳程度のバス停のような待合スペースがあるだけの駅だった。到着したのは朝5時半ごろ。夏時間だったので日の出は通過直前。今から撮影地に歩いてもどうしようもないのでフランクフルトで買ったサンドイッチをほおばりつつ明るくなるのを駅でまった。

 徐々にトワイライトゾーンになってきた頃駅を出て撮影地へ20分ほど歩いた。どうもこの日は雲が多く露出は多少あるだろうが晴れは望めなさそうという条件。だがしかし103型が撮れることに変わりはない。セッティングし満を持して103型を待つ。f:id:limited_exp:20180111025334j:plain

 ICEや貨物が何本か通過した後、ついにお目当て103型がIC2097の先頭でやってきた。3つ目光る流線形のその機関車は動態保存機と思えぬ俊足でミュンヘンへ急ぎ走り去っていった。ああ、遠路遥々ドイツまで来てよかった、そう思えた瞬間だった。