ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.112 帰郷

 大陸鉄道の醍醐味の一つといえば、やはり島国たる日本ではお目にかかれない国際列車だろう。もちろん定期の国際列車もあれば臨時、団体の国際列車もある。各国、電化方式や信号方式など様々な違いこそあれど、陸続きでかつ線路幅が同じというだけで様々な国の様々な列車がやってくる。

 ドイツを中心に運転される団体旅行列車にAKEラインゴルトというものがある。以前取り上げた保存会によるラインゴルト号の運転(Report No.105 ニーベルンゲンの宝 - ぽっぽ屋備忘録)とは違い、こちらはツアー会社がラインゴルト客車を保有しており、ライン川沿いを運行するツアーを主として運用されている。ドイツ国内の運用が多いのだが、時折、オーストリアやスイスといった近隣諸国へ足を延ばすツアーが運転されることがある。牽引機は場合によってまちまちだが、基本的にはクリームと赤のツートン塗装、いわゆるTEE塗装のE10型電気機関車が担当することになっており、客車も同じTEE塗装になっているので牽引機さえそろえば往年のラインゴルト号さながらの走行を拝むことができる。

 今夏のヨーロッパ遠征では、ちょうど帰国前日の9月17日に運転があることがわかっていた。今回はAKEラインゴルトがオーストリアへのツアーからラインゴルトがドイツへ帰ってくるということであったので、フランクフルトから夜通しICEで移動しミュンヘン経由で遥々オーストリア国境近くの田舎町、Überseeまで足を延ばした。あいにく低い雲が垂れこめる天気で、9月というのにもういかにも秋の終わりかと思うほど寒い気温であった。Übersee駅から歩くこと20分ほど、農道わきの線路沿いで撮影することにした。本来はもう少し歩いた場所にある俯瞰撮影地に行こうかと考えていたのだが、あいにくの天気と気温とあって、駅近くでお茶を濁すことにしたのだった。

 さすがオーストリアとドイツを結ぶ幹線とあってひっきりなしに貨物や旅客列車がやってくる中、AKEラインゴルトの通過を待った。事前に手に入れていた時刻から予測すると大方昼過ぎごろの通過と思われた。

f:id:limited_exp:20171210172426j:plain 時折冷たい雨に打たれながら待つこと4時間。読み通りの時間帯にAKEラインゴルトはやってきた・・・のだが何かおかしい。近づいてきてようやくその違和感の理由がわかった。機関車がE10ではなくベクトロンシリーズと呼ばれるシーメンス製の量産型新型電機だったのだ。いささか落胆しつつ保存車両とは思えぬ快速っぷりで飛ばしていくのを見送った。後から聞くところによればこの塗装は特別塗装で、数機しか同様の塗装はいないらしいので、得をしたといえばしたことになりそうだ。次回渡欧時に運転があればぜひともE10牽引のAKEラインゴルトを撮影してみたいものだ。