ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.110 Guten Morgen

 日本では既に絶滅危惧種とすら言える機関車牽引の客車寝台列車だが、海を渡った諸外国ではまだまだ全盛のところもある。中国やロシアならば大陸を横断するような夜行列車が数多く運転されているし、数を減らしてきてはいるもののヨーロッパでもドイツ発スイス経由オーストリア行のような国際寝台列車が運転されている。

 大陸で運転されている寝台列車の多くが客車列車なのは理由がある。一つ大きな理由は、国同士が陸続きで鉄道がつながっていても各国の鉄道の仕様が異なることがあげられる。例えば、電化方式だけでみてもドイツ、スイス、オーストリアは主に交流15000V、16×(2/3)Hz電化だが、イタリアでは直流3000V電化、オランダでは直流1500V電化と様々な規格が混在している。更に、各国によって要求される走行性能も異なる。オランダのような平坦な土地が多いところでは山岳向けの高出力車両はあまり必要ないが、スイスやオーストリアなどアルプス越えが存在する鉄道では高出力の山岳向け車両が必要になる。こういった様々な仕様を考えた場合、複数電源に対応した車両や汎用性の高い走行性能を持たせたを製造するよりも、汎用客車を用いて国ごとに機関車を付け替える方法をとる方がよっぽど安上がりなのだ。

 ヨーロッパ圏内で運転されている寝台は種々あるが、そのうちオーストリア連邦鉄道(ÖBB)が運行しているものはNightjetというブランドで運行されており、ドイツ、スイス、オーストリア、イタリアで運行されている。また、その他クロアチアなどへ向かうものもナイトジェットパートナーとして運行されている。このうち何本かはスイス国内を早朝通過するものがあり、欧州遠征中にぜひともスイスで記録したいと考えていた。向かった先はスイスとリヒテンシュタインの国境の街、Sevelen。ここはスイスとリヒテンシュタインの間を流れる川に沿って谷間になっており両岸にはいかにも中央ヨーロッパらしい山々が連なっている。ここを早朝通過するのはEN464列車とEN466列車なのだが、訪問した9月14日は山影の都合上、EN464列車のみがベストコンディションで撮れる状況だった。

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 前日にボーデン湖のほとりのアルボンに宿を取り早めに就寝。早朝、まだ暗いうちから電車に乗って凍える寒さの中Sevelenの駅に降り立った。幸先よいことに空は雲一つない快晴。吹き付ける風に震えながら農道の脇の撮影地に着いた。まだ山影のうちから構図確認などをしていると前走りでEN466列車が通過していった。そしてそこから待つこと約1時間、鋭い朝日に鼻筋を浮かび上がらせてRe420牽引のEN464列車がやってきた。故障なのか前パンタが半上がり状態なのが些か不満ではあるが朝の素晴らしい光線の元撮れたことで大変満足だった。この後は少し撮影を続行したのち、翌日のVSOE撮影(Report No.104 走る舞台 - ぽっぽ屋備忘録)に向けてWassenへとコマを進めたのだった。