ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.93 縁の下の力持ち

レールは車輪が上を走るごとにその荷重などから変形、疲労、損傷、磨耗していく。さらに鋼を材料にしているので長い間使われると腐食もするし、直流電化の鉄道であれば電食もする。故に安全運行のためにはレールの定期的な交換が不可欠である。

 急曲線の多い鉄道路線では特に磨耗はひどくなる。鉄道車輪の多くは車のようなディファレンシャルギアを持たないので曲線を通過するときには曲線の内側と外側の距離の違いは車輪とレールが擦れることで吸収することになる。フランジ音と呼ばれたりもする多くの人が不快と感じるあのきしみ音はその産物である。そして音と同時にレールと車輪は磨耗していっている。
通常、レールの交換寿命は10年以上のケースが多いが、急曲線の連続する路線でかつ列車本数が多い場合、数年ほどで交換を迎える場合もある。紀勢本線JR西日本区間はその最たる例で、曲線が多く、海岸沿いを走るため潮風から腐食も著しく、線路に大きな横力を与える振り子式車両が走っているため磨耗が著しい。このため紀勢本線は比較的頻繁にロングレール輸送が行われ、輸送は宮原に所属するDD51重連によって牽引される。
 5月末にもなると日の出が十分早くなり、早朝に向日町に帰ってくるロングレール輸送の返却が山崎界隈で撮れるようになる。晴天の5/18の朝、紀勢工臨の返却が走るとの報を受けて友人たちと朝の山崎界隈へ繰り出した。やってきたのは山崎〜長岡京の調子踏切。先客の方々に挨拶しつつ話を伺っているとどうやらその前の週に運転された同じダイヤの工臨ではまんまと下り貨物に被られたとのことだった。一抹の不安を覚えつつ待つこと十数分。

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DDがヘッドライトを輝かせてやってきた・・・のだがよく見るとその横を207系普通電車が並走している。さらに対抗からも207系普通電車。これはまんまとやられてしまうのではないかと思った。だが、なんとか両方の電車はすれ違い構図から抜けてくれた。が、ここで、あと少しで切り位置というところで下り貨物が接近してきた。まずい、まずい、はやく、はやく、そんなどうしようもないことを思い高鳴る鼓動。貨物に被ろうかというギリギリで縁の下の力持ちがフレームを通過していった。