ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.85 残影

  国鉄型の急行型、特急型車両はその多くが分散冷房を採用していた。153系、165系、455系、485系、キハ58などなど、国鉄の顔を代表したような車両の多くが分散冷房であった。これは、分散冷房を採用することで騒音が減ること、屋根にダクトを設置する必要がないため車内空間が広くなること、車体の補強が最低限でよいことなどが理由としてあった。特に、分散型冷房が採用された車両の多くは、特急車を除くと初期には非冷房で落成し後年冷房化改造されたものが多かった。改造の手間、費用を減らすという意味でも分散冷房は最適だったのだ。

 そんな分散型冷房装置の中で最も多く製造・使用されていたのがAU13形。485系165系、キハ58といった車両に採用されていたものだ。パンタグラフ搭載車についてはスペースの関係上集中冷房式が採用されいたが、他の車両では基本的に1両につき5基から6基のAU13を搭載していた。このAU13形は一部115系の初期車の冷房化改造においても使用された。そのうちの1両が現在(2017年4月5日現在)下関総合車両所に所属するクハ115-608である。115系の初期車の中でもAU13を用いて冷房化改造されたのはクハ115-607およびクハ115-608のみで、さらには607はAU13を4基のみ搭載する異端車で、608は他の急行型などと同様6基搭載するという形だった。ただし、608は6基搭載するものの、おそらく車両強度の問題から165系や455系のように均等な間隔でクーラーが配置できず、ドア付近上部に2基ずつまとまって配置するという手法をとっておりこちらもこちらで異端車である。クハ115-607は2012年に廃車されており、残るAU13搭載115系は現在クハ115-608のみである。現在、クハ115-608は下関C-13編成の下関方先頭車を務めており、下関車の他115系と共に三石から下関までの広範囲で運用されている。

 さて、去る4月3日に、偶然岡山に用事があり出向いていた際、ふと気になって友人にC-13編成の運用を調べてもらうと、夕方日没直後に岡山へやってくる運用であった。さすがに順光では撮影できないのでここはひとつ、夕焼けのシルエットにして分散冷房を目立たせるのも一興なのではと考え、ロケハン。山陽本線中庄~庭瀬間にちょうどよいところを発見し、日没前から出向いてみた。

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 田圃のあぜ道に陣を構えること1時間半ほど、お目当てのC-13編成が358Mの運用で岡山へ上ってきた。あたりはちょうど日の暮れたトワイライトタイム。分散冷房を6基載せた2段式窓の東海顔シルエットはさながらかつての急行型電車を彷彿とさせるようだった。