ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.62 フィルムとデジタルのお話

 ほんの20年ほど前まで、写真といえばフィルムが主流であった。デジタルカメラは1975年にコダックが発明したが、1990年代まで高価でフィルムを使用する銀塩カメラに劣っていたこと、家庭用コンピューターの普及状況なども相まってあまり普及しなかった。しかし近年では、半導体技術の進歩によってデジタルカメラが比較的安価になったこともあり、カメラの主流はデジタルに取って変わられた。

 私は現状フィルムとデジタルを併用しているが、これはフィルムには1つデジタルではどうしても再現できないものがあるからだ。写真に撮って色は構図と同じかそれ以上に重要なものだ。フィルムとデジタルでは色の出方が全く違い、デジタルで頑張ってフィルムの色を再現しようとしてもどこかな発色が異なるのだ。

 仕組みの話をすれば、フィルムが光による化学反応によって色を出すところをデジタルは光を電気信号として取り込み、それを画像処理アルゴリズムにのっとって処理する。なお、RAW現像のようにアナログ-デジタル変換をしただけの生データとして記録を行うこともできるが、これをきちんとJPEGなどの写真データとするには画像処理エンジンを通してアルゴリズムに従った処理を行う必要がある。デジタルの場合、この画像処理エンジンが曲者なのだ。デジタルカメラはCCDもしくはCMOSセンサーという受光センサーに当たった光を記録しているわけだが、センサーは非常に小さい受光素子の集合からなっている。センサーの表面には素子が碁盤の目に並んでおり、この素子と素子の間には必ず微小な隙間があり、この世のすべての物質が原子からできていることから受光素子一つ一つの小ささには限界がある。画像処理エンジンでは、この隙間の補完処理と素子間のばらつきの補正を行っているわけで、デジタルカメラで得られる情報は少なからず画像処理エンジンのアルゴリズムによって生成された近似解、つまり”本当に近しい嘘”なのである。フィルムの解像度をデジタルの画素数へ理論的換算計算をすれば、現在のデジタルカメラの画素数はフィルムとほぼ互角かもしくはフィルム以上であるが、色となると、フィルムにほぼ一様に塗布された感光剤粒子の化学反応によるウソのない発色に256色のデータで写真を作るデジタルは勝てないだろう。しかし、フィルムにはその製品ごとに発色の偏りがあるのでその点ではウソの発色といえるかもしれない。

 近年では補正方法も技術革新が続いているがそれでも人が設計するモノな以上、化学反応であるフィルムに完全に一致させるということは不可能とは言わずともかなり非現実的である。

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この2枚の写真は、2016年8月31日に関西本線塩浜駅にて撮影したDD51-853牽引の5263レであり、上がデジタル、下がフィルム(Provia100F(増感1段))である。デジタルはRAWで撮影したものをなるべくフィルムに近い発色へ近づけたつもりであるがやはり発色が少しずつ異なる。色の深み、階調などなど、写真の”厚さ”を印象付けるものの違い、フィルムとデジタルの違いを少しわかっていただけただろうか。

 

※なおデジタルとフィルムでレンズ、露光条件が異なるため単純比較はできない。