ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.52 みにくいアヒルの子

 日本の鉄道技術の結晶とも言える新幹線。東海道新幹線に始まり、今では北は北海道・新函館北斗から南は九州・鹿児島中央までを結び日本列島を縦断する一大輸送網を形成している。

 新幹線網の拡大とともに新幹線車両も変化してきた。団子鼻に例えられた0系に始まり、シャークノーズと呼ばれた100系、くさび形のフロントマスクで初代のぞみとして活躍した300系、ロケットのようだと言われた500系などなど、高速性と静音性を実現するため、新幹線の形状は日々進化してきた。多種多彩な先頭形状をもつ新幹線車両のうち、登場時、それまでに類を見ない特異な形状から「カモノハシやアヒルのようだ」と揶揄された形式があった。700系である。
 それまでの新幹線車両は弾丸列車の名のごとくすっきりとした流線型のデザインだったのだが、700系ではアヒルのくちばしやカモノハシのようにのっぺりとした先頭形状となった。しかし、この形状にはもちろん意味があった。
 高速で新幹線がトンネルに突入すると、トンネルの出口側では急激なトンネル内部の気圧変化に伴ってドーンという音が発生する所謂トンネルドン現象がおこる。トンネルドン現象はトンネル微気圧波とも呼ばれ、これの発生を抑制するためには、進行方向に対して投影断面積の変化率を一定、かつ最小にする必要がある。500系ではこのために27mの車体に対して15mにも及ぶロングノーズと円形車体で対応したわけだが、これは客室容積の現象、および先頭車両の定員の減少という欠点を抱えていた。そこで、700系では500系と同等の対策効果を500系よりも短いノーズで実現するためにエアロダブルウィングと呼ばれるカモノハシ形状のノーズを採用したのである。
 一時は300系とともに東海道山陽新幹線の顔として活躍した700系だったが、後継であるN700、N700Aの導入により徐々に数を減らしつつあり、2020年には更にN700Sの導入が始まるとも言われている。

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 この写真は、一昨年ふらりと立ち寄った京都〜米原間の東山トンネル山科口側付近の跨線橋で撮影したものである。下り運用につく700系と上り運用につく700系がうまく画面内ですれ違ってくれた。カモノハシと揶揄された一族がここ ですれ違わなくなるのも遠い日ではないだろう。