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ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.51 赤ひげの山賊

 日本の鉄道史は山との闘いであったと言っても過言ではないだろう。環太平洋造山帯に位置する我が国は、国土のおよそ2/3が山地であり、残り1/3の平地に数々の都市が点在している。つまり、これらを鉄道で結ぶことは山をいかにして攻略するかということになるのである。距離は伸びるが山を避けて裾野を回り込む方法、建設費はかかるが長大トンネルを掘り山を貫く方法、スイッチバックループ線などを用いて峠を越える方法、勾配はきつくなるが直線的なルートで峠を越え、補助機関車を用いる方法などなど様々な方法で日本の鉄道は手を変え品を変え山を攻略してきた。特に、山を避けて裾野を回り込む方法は、建設費が安く済み、かつ峠を越える場合には距離が長くなるため勾配を緩くすることができるので山岳路線では多用されてきた方法である。ただし、この方法の場合、距離が長くなると同時にカーブが連続するため速達化することが難しい。

 カーブが連続する路線の速達化は国鉄の頭を悩ませることになったわけだが、車体傾斜装置を実用化するという方法で解決を図ることになった。国鉄ではヨーロッパで1940年代から研究開発が行われ、実用化されていた油圧シリンダーを用いた強制車体傾斜装置ではなく自然振り子方式を用いた特急車両を開発することとなり、1970年、591系交直両用自然振り子試験車を試作し東北本線羽越本線鹿児島本線中央本線などで試験運転を行った。そして、これらの試験運転から得られた結果より、1973年、満を持して381系直流特急電車が誕生した。

 中央本線「しなの」、紀勢本線「くろしお」、伯備線「やくも」などカーブの多い線区で振り子を生かし活躍してきた381系だが、近年では新型車への置き換えが進んでいる。2016年3月ダイヤ改正では、287系導入で「くろしお」から押し出される形で福知山区へ転出した編成が289系の導入によって運用を離脱、随時廃車または米子電車区へ再転属となった。

 289系による置き換えが発表され、2015年の夏も終わりに近づいた9月14日、気象衛星の画像を見ると亀岡方面は晴れているようだったので381系の運用である山陰本線下り、きのさき13号5013Mを狙いに保津峡~馬堀の馬堀カーブへ赴いた。この日の運用はFE65編成の増結なし4両であったので、縦構図で切り取ることにした。

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 傾きを増すにつれ朱色を増す晩夏の太陽は雲隠れすることなく舞台を照らしてくれている。17時45分、トンネルからモーターの轟きが聞こえてきた。朱色のステージライトの中、国鉄色を翻して赤ひげの山賊が駆けてきた。ファインダーの中でまぶしく反射する夕日、今だ!無我夢中でシャッターを押した。