ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.37 合いの子

鉄道システムというのは線路や信号設備、架線やトンネルなど様々な要素が複合した巨大なシステムであり、その一つでも欠ければ安全運行にかかわる。これら鉄道システムを検測し、システムが正常値になっているかどうかを確認するために裏方の車両たち、検測車と呼ばれるものが存在する。例えば、有名どころで言えば、東海道山陽新幹線ドクターイエローこと923系新幹線がこれに該当する。

今回は、国鉄443系という検測車についてである。443系は架線設備を検測するクモヤ443と信号設備を検測するクモヤ442の2両からなる検測車で、交流50Hzおよび60Hz、直流電源に対応しており、保安設備を考慮しなければ電化路線であれば日本中どこでも検測することができる車両である。車体は一見すると頭のカタチそのものは485系に似るのだが、車両側面を見ると、当時製造中だった165系や455系といった急行型電車系の設計を流用している。さらには車体は当時の急行型交直流電車の標準的な塗装であった赤13号の下地にクリーム4号の帯を巻いた塗装になっており、まさに特急車両と急行車両の”あいのこ”車両なのである。

私からすれば、この手の事業車や”あいのこ”車両は恰好の被写体であり、ひとたび検測とあって日中動くとあれば撮りに行きたくなるのである。秋の香り感じる2015年9月18日、嵯峨野線で443系の検測があると知り合いに教えていただき、馬堀界隈へ出向いた。ちょうど秋口とあって稲穂が頭を伸ばしているころだったので、検測風景と絡めようと駅から少し歩いた田圃沿いにカメラを構えた。

f:id:limited_exp:20160608020929j:plainちぎれ雲が多く、晴れたり曇ったりが繰り返す天気だったのだが、幸いにも風が比較的強く吹いており、太陽周辺の雲をきれいに持って行ってくれた。某噺家番組の座布団運び顔負けである。しばらくして、もうすぐ金色に染まるであろう田圃を横目に”あいのこ”443系がモーター音も高らかに軽快な足取りでやってきた。