ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

Report No.19 銀の風

EF81には通称「銀罐(ぎんがま)」と呼ばれる罐が存在する。EF81は製造時期や配置地区によって形態が異なるものが多いが、銀罐はその中でも特殊な部類であろう。

銀罐と呼ばれる所以は、その外見、つまり他の同型機と違ってステンレス製外板であることに由来する。第2次世界大戦中に開通した関門トンネルは、海底とトンネルまでが非常に近く、海水や地下水が毎日600トン以上漏水してくる。このため、車両への塩害が激しく、腐食防止のためステンレス製の専用機関車を用いることになった。

初代として活躍したのがEF10、2代目に用いられたのがEF30である。そして、EF30の後継および増備分としてEF81形300番台”銀罐”が製造された。しかし、輸送力の増強などを目的として後継のEH500が導入されたことによって今や関門トンネル運用から撤退、さらにはEF81-303を残し僚機はすべて休車、廃車されてしまった。

 

この最後の1両となった銀罐を狙うべく、2015年10月17日、友人たちに連れられて九州の地へと赴いたのだった。私が「もう九州寝台は走っていないんだなぁ」と思いにふける中、友人の運転する車は夜を徹して山陽自動車道を下り、早朝小倉へ到着した。前日にEF81-303は運用差し替えが発生しており、正直どの運用に入るか確実には読めなかったためひとまず機関区を偵察。すると、どうやらお目当てにしていた運用、4075レで南延岡に下る運用に入りそうである。そうして一路南へ。途中トラブルがあり、一度追い抜かれてしまったものの、宮崎県手前で抜き返すことができ大一番の撮影地、深瀬カーブで陣を構えることができた。

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天気は雲一つない文句なしの快晴。少々うるさい架線柱の高圧き電線ビームをなるべく隠すためローアングルに広角で構えた。デジタルの設定そこそこに、フィルム機設定は装填していたVelvia50を1段増感で強気のF3.5、1/4000設定とした。

カーブの奥にキラっと銀が反射したと思うと、車体に蒼穹をうつしこんだ銀罐がやってきた。フレーミングギリギリまでひきつけて編成後部に連結された黄タンクコンテナが映り込んだところでシャッターを落とした。

この後は南延岡まで行き、黄タンクコンテナオンリーの編成を撮ったのち、翌日のもう一つのネタ、485系Do32編成のラストランへ転戦するため大分は別府まで向かったのだった。これについてはまたの機会に備忘録として記したいと思う。