ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

海外

Report No.164 バイエルンの煙を追って

日本人にとって馴染みのあるドイツの地域はどこだろうか。ドイツ連邦には16の州があるが、そのすべてを知っている日本人はそう多くないだろう。その16の州のうち、おそらく本邦で最も知名度があるといってもそう過言ではないのはバイエルン州ではないだろう…

Report No.163 東国の新人

欧州において、鉄道車両の多くは顧客たる鉄道会社が一から設計してオーダーメイドするものではなく、ありものの設計を微調整して導入するというセミオーダーメイドが主流となっている。これはひとえに、電化方式や信号方式さえ違えど、軌間がおおむね1435mm…

Report No.162 峡谷

ジュリア・アルプス山脈がそびえるスロベニア北西部は、切り立った山々と深い森、そして囁く清流が織りなす絵本のような景色が広がっている。その一つがヴィントガル(Vintgar)峡谷である。1891年に発見されたこの峡谷は、ジュリア・アルプスから流れるラドウ…

Report No.161 三国特急

欧州において国際列車は珍しい存在ではない。ひとたびドイツやスイスの大規模な駅へ行けば、一時間のうちに一本は少なくとも国際列車を見ることができるだろう。近年では、近距離の移動に対して飛行機を使うことによる環境への負荷を減らそうという、いわゆ…

Report No.160 マルチプレイヤー

本邦でオール二階建て車両というとE1系新幹線やE4系新幹線、あとは先頭車に目をつむれば215系程度であるが、諸外国に目を向けるとオール二階建て車両というのは存外メジャーな車両カテゴリーである。通勤電車というジャンルの中で見ても、諸外国、特に欧米で…

Report No.159 共産主義の大地

1917年11月7日、世界は初めて社会主義国家の成立を見た。のちにソビエト連邦となるロシア・ソビエト連邦社会主義共和国の誕生であった。第二次大戦下のソビエト連邦では、マルクス・レーニン主義の大義名分の名のもとに、集団農業化や重工業を主とした計画経…

Report No.157 Legend

欧州では国同士で電化方式や信号設備の違いがあることなどから、国際列車にはまだ数多くの客車列車が走っている。だが、それも最近は規格化された各国対応の電車・気動車が開発されつつあり、徐々に客車列車は数を減らしている。さらに言えば、各国内のロー…

Report No.156 リゾート急行

終端駅または途中駅で他線区への接続がない路線のことをしばしば盲腸線と呼ぶことがあるが、こういった路線の多くは地域輸送を主とするローカル線であり、優等列車や長距離列車が運転されているのは稀である。盲腸線でありながらそういった列車が運転されて…

Report No.155 Baureihe 01

ドイツの蒸気機関車を語るうえで外せないのが01形だろう。赤く塗られた直径2000mmという大型の動輪と威圧感のある大型のボイラー、英国の蒸気機関車のような芸術品のような美しさと対照的な工業製品としての工芸品のような美しさがこの機関車が長きにわたり…

Report No.154 バイエルンの夏

欧州の夏は短い。日本のように9月を過ぎても暑いというようなことはあまりなく、9月も半ばになれば朝夕は長袖にジャンパーが必要になる。それでも、まだ9月は日中になればぽかぽかと温かく、野山の緑は夏最後の瑞々しい輝きを見せる。 2019年9月の訪欧では、…

Report No.153 弾丸機関車

日本が新幹線を開業させたころ、ヨーロッパではまだまだ機関車牽引の旅客列車が全盛であった。ドイツでは積極的な線路改良や車両開発を行い、200km/hでの特急列車運転を計画した。その中で生まれたのが103型電気機関車である。流線形の流麗なフォルムとクリ…

Report No.152 漢江

1974年、韓国・ソウルで初めての地下鉄、1号線が開業した。1号線は、日本からのODA(政府開発援助)および技術支援により開業した路線である。1号線の開業に合わせては、日本から186両の電車が輸出された。これが、韓国鉄道庁1000系およびソウル地下鉄公社1000…

Report No.151 パノラマ急行

言わずと知れた峠路線の聖地、スイス国鉄Gotthard線は、3000~4000m級の山々が連なるアルプス山脈の谷間を縫うように走り、スイス/Zürich方面からイタリア/Milano方面へ抜ける路線である。2016年にGotthard Base Tunnel(ゴッタルド基底トンネル)が開通したこ…

Report No.146 赤い星の巨人

蒸気機関車の世界最速記録といえば、流麗な流線型のボディが美しいイギリスLNERのA4形マラード号が保持する202.8km/hである。この記録は第二次世界大戦直前の1938年7月3日に達成された記録だ。この約2年前の1936年5月11日にはドイツ国鉄05形002号機が200.4km…

Report No.144 ゴーグル

“ゴーグル”の愛称で親しまれている機関車が中欧いる。こういうと前面窓のまわりが眼鏡のフレームのように塗られているような車両を想像する人も多いかもしれない。だが、この“ゴーグル”機関車は塗装ではなく、前面窓自体が車体から少し前に張り出した形にな…

Report No.143 ドナウの真珠

オリエント急行といえば、『オリエント急行の殺人』や『007 ロシアより愛をこめて』で登場した、フランス・カレーとトルコ・イスタンブルを結ぶ便が一番有名ではないだろうか。オリエント急行はいくつもの列車の総称であり、「オリエント急行」、「バルト・…

Report No.142 群青と深緑と

山陰本線迂回貨物からすでに1年以上が経つ。日本の東西の大動脈の一翼たる山陽本線が100日にもわたって不通であったのは、阪神淡路大震災の被災による不通期間74日を上回るものだ。そしてこの日数こそが、いかに深刻な被害を、かの豪雨が鉄道にもたらしたか…

Report No.141 古城の街

ドイツ東部、ドレスデンの南にKönigstein(ケーニヒシュタイン)という町がある。ドイツ語のKönigは王、Steinは石を意味し、直訳すれば王の石といったところの名前になる。ケーニヒシュタインはエルベ川に面した街であり、エルベ川が長年にわたって大地を削り…

Report No.140 ボヘミアンPCCカー

ボヘミアとは現在のチェコ共和国の西半分、ひいてはポーランド南部からチェコ北部にかけての地域を指すラテン語のいにしえの地名である。このボヘミアの地、チェコ共和国はプラハには、かつてタトラ国営会社スミーホフ工場というものが存在した。ここでは主…

Report No.139 ラミナーツカ

平成から令和に元号が変わった今年、天皇陛下の即位に際して所謂”ゴールデンウィーク”が今までで最長の10連休となった。10連休ともなればこの長期休暇を利用して国外に飛びたいと思うのが海外鉄の端くれとしての性。だが長期休暇ということで日本発の航空券…

Report No.137 遠戚

国鉄DD54ディーゼル機関車といえば、かつて欠陥機関車とあだ名され、法定耐用年数の18年を満たさずして引退した曰く付き機関車である。DD54は当時西ドイツで既に実用化されていたV160形ディーゼル機関車の設計を元に開発されたものだった。だが、実際に運用…

Report No.135 歴史街道

第一次世界大戦が終結しオーストリア=ハンガリー二重帝国が解体されるまでスロベニアはオーストリア領であった。オーストリア=ハンガリー帝国がスロベニアを支配する中、1869年、スエズ運河が開通し地中海沿岸の港の地位は大きく向上した。当時帝国は現在の…

Report No.133 カルストの崖

地理の授業を受けたことがる方でなくとも「カルスト地形」という名称を一度は聞いたことがある方は多いかと思う。カルスト地形の「カルスト」という名の由来はスロベニア西南部およびイタリア北東部のクラス地方が語源である。というよりも、そもそもこのカ…

Report No.132 ブリジット

友達や知り合いを「あだ名」で呼んだことがある人は多いかと思う。船や飛行機、鉄道車両もまた愛着やはたまた侮蔑をこめて愛称やあだ名がつけられることがしばしばある。国内で有名な例で言えば、キハ81がブルドッグ、419系が食パンと呼ばれていたことなどが…

Report No.131 断崖絶壁の生命線

バルカン半島の付け根の西側、イタリアの隣にスロベニアという国がある。似た国名にスロバキアがあるがそれとはまた別の国である。総人口約200万人、面積20273㎞という小国だが、北はオーストリア、東はハンガリー、南はクロアチア、西はイタリアに囲まれ、…

Report No.129 リベンジ

一度外を見てしまえばまた行きたくなるというもの。今年も夏季休暇を利用して欧州遠征を組むことにした。今回はスロベニア、ドイツをメインに遠征することにし、スイスはチューリッヒを中心に動く計画にし、以前から興味があると言っていた友人たち3人を誘っ…

Report No.124 弾丸機関車

日本で新幹線が産声を上げた翌年、当時の西ドイツで最高速度時速200キロでの運転を目指して試作新型電気機関車E03型が開発された。E03型は4両が製造され、1965年から5年間営業運転を含む実地試験を行った。そしてその実績を踏まえて投入されたのが量産車であ…

Report No.121 アジアンTGV

1964年日本で新幹線が誕生し、早くも54年。その後新幹線の後を追って世界各国で高速鉄道がつくられることとなった。有名どころで言えばドイツのICE、フランスのTGV、イタリアのペンドリーノなどがあり、これらは世界中様々な国へ輸出され運用されている。中…

Report No.118 ゴッタルド峠

アルプスの山々に囲まれたスイスには数多くの峠が存在するが、その中でも有名なのが南部のイタリア方面へ抜ける途中にあるゴッタルド峠だ。かつてはこの峠を越えようとして遭難するものも多く、13世紀ごろまでは道も険しく主要路としては機能していなかった…

Report No.112 帰郷

大陸鉄道の醍醐味の一つといえば、やはり島国たる日本ではお目にかかれない国際列車だろう。もちろん定期の国際列車もあれば臨時、団体の国際列車もある。各国、電化方式や信号方式など様々な違いこそあれど、陸続きでかつ線路幅が同じというだけで様々な国…