ぽっぽ屋備忘録

にわかな鉄道好きによる日々の撮影の備忘録

客車列車

Report No.166 秘境列車

登山鉄道というと、箱根登山鉄道やはたまたスイスのユングフラウ鉄道を思い浮かべる方も多いだろう。実は、登山鉄道という名前に明確な定義は存在していないのだが、おおむね、特殊な装備や構造をもって通常の鉄道車両では克服困難な路線を運行している路線…

Report No.157 Legend

欧州では国同士で電化方式や信号設備の違いがあることなどから、国際列車にはまだ数多くの客車列車が走っている。だが、それも最近は規格化された各国対応の電車・気動車が開発されつつあり、徐々に客車列車は数を減らしている。さらに言えば、各国内のロー…

Report No.156 リゾート急行

終端駅または途中駅で他線区への接続がない路線のことをしばしば盲腸線と呼ぶことがあるが、こういった路線の多くは地域輸送を主とするローカル線であり、優等列車や長距離列車が運転されているのは稀である。盲腸線でありながらそういった列車が運転されて…

Report No.155 Baureihe 01

ドイツの蒸気機関車を語るうえで外せないのが01形だろう。赤く塗られた直径2000mmという大型の動輪と威圧感のある大型のボイラー、英国の蒸気機関車のような芸術品のような美しさと対照的な工業製品としての工芸品のような美しさがこの機関車が長きにわたり…

Report No.154 バイエルンの夏

欧州の夏は短い。日本のように9月を過ぎても暑いというようなことはあまりなく、9月も半ばになれば朝夕は長袖にジャンパーが必要になる。それでも、まだ9月は日中になればぽかぽかと温かく、野山の緑は夏最後の瑞々しい輝きを見せる。 2019年9月の訪欧では、…

Report No.153 弾丸機関車

日本が新幹線を開業させたころ、ヨーロッパではまだまだ機関車牽引の旅客列車が全盛であった。ドイツでは積極的な線路改良や車両開発を行い、200km/hでの特急列車運転を計画した。その中で生まれたのが103型電気機関車である。流線形の流麗なフォルムとクリ…

Report No.151 パノラマ急行

言わずと知れた峠路線の聖地、スイス国鉄Gotthard線は、3000~4000m級の山々が連なるアルプス山脈の谷間を縫うように走り、スイス/Zürich方面からイタリア/Milano方面へ抜ける路線である。2016年にGotthard Base Tunnel(ゴッタルド基底トンネル)が開通したこ…

Report No.146 赤い星の巨人

蒸気機関車の世界最速記録といえば、流麗な流線型のボディが美しいイギリスLNERのA4形マラード号が保持する202.8km/hである。この記録は第二次世界大戦直前の1938年7月3日に達成された記録だ。この約2年前の1936年5月11日にはドイツ国鉄05形002号機が200.4km…

Report No.144 ゴーグル

“ゴーグル”の愛称で親しまれている機関車が中欧いる。こういうと前面窓のまわりが眼鏡のフレームのように塗られているような車両を想像する人も多いかもしれない。だが、この“ゴーグル”機関車は塗装ではなく、前面窓自体が車体から少し前に張り出した形にな…

Report No.143 ドナウの真珠

オリエント急行といえば、『オリエント急行の殺人』や『007 ロシアより愛をこめて』で登場した、フランス・カレーとトルコ・イスタンブルを結ぶ便が一番有名ではないだろうか。オリエント急行はいくつもの列車の総称であり、「オリエント急行」、「バルト・…

Report No.141 古城の街

ドイツ東部、ドレスデンの南にKönigstein(ケーニヒシュタイン)という町がある。ドイツ語のKönigは王、Steinは石を意味し、直訳すれば王の石といったところの名前になる。ケーニヒシュタインはエルベ川に面した街であり、エルベ川が長年にわたって大地を削り…

Report No.137 遠戚

国鉄DD54ディーゼル機関車といえば、かつて欠陥機関車とあだ名され、法定耐用年数の18年を満たさずして引退した曰く付き機関車である。DD54は当時西ドイツで既に実用化されていたV160形ディーゼル機関車の設計を元に開発されたものだった。だが、実際に運用…

Report No.135 歴史街道

第一次世界大戦が終結しオーストリア=ハンガリー二重帝国が解体されるまでスロベニアはオーストリア領であった。オーストリア=ハンガリー帝国がスロベニアを支配する中、1869年、スエズ運河が開通し地中海沿岸の港の地位は大きく向上した。当時帝国は現在の…

Report No.129 リベンジ

一度外を見てしまえばまた行きたくなるというもの。今年も夏季休暇を利用して欧州遠征を組むことにした。今回はスロベニア、ドイツをメインに遠征することにし、スイスはチューリッヒを中心に動く計画にし、以前から興味があると言っていた友人たち3人を誘っ…

Report No.124 弾丸機関車

日本で新幹線が産声を上げた翌年、当時の西ドイツで最高速度時速200キロでの運転を目指して試作新型電気機関車E03型が開発された。E03型は4両が製造され、1965年から5年間営業運転を含む実地試験を行った。そしてその実績を踏まえて投入されたのが量産車であ…

Report No.123 押し屋

山口線では例年、年末年始に休暇の観光需要を見込んで蒸気機関車牽引列車の運転が設定される。年末のものはいつも通りSL「やまぐち号」として運転されるが、年始のものは初詣にちなんでSL「津和野稲成」号として名前を変えて運行される。ヘッドマークもこの…

Report No.117 懐かしのシュプール

かつてはブルートレインなどの優等列車から普通列車まで、客車列車は幅広く運転されていたが、今や一部のイベント用などの波動用輸送や観光列車を除いてめっきりその数を減らしてしまった。特に2000年代以降、低価格な高速バスの台頭や新幹線サービスの向上…

Report No.108 2000mm

蒸気機関車の性能を語る際、しばしばその動輪直径が話題に上がることがある。これはなぜかというと、実は蒸気機関車の場合、その動輪直径によって最高速度が左右されるからである。蒸気機関車は、まず燃料を燃やしてその熱で水を沸かし、蒸気を発生させる。…

Report No.106 野を越え、山越え、谷越えて

いささかばかり欧州遠征の話が続いたので今回は国内での話を思い出して書いてみることにしよう。 7月の中旬、知人からDD51牽引の35系新型客車の試運転が山口線でまた走るとの話を教えていただいた。これの前回のDD51牽引の試運転(Report No.100 復刻 - ぽっ…

Report No.105 ニーベルンゲンの宝

ライン川の底にはニーベルンゲンの宝が沈んでいる、そんな伝説がドイツにある。ニーベルンゲンの宝とは、13世紀ごろにドイツで書かれた叙事詩『ニーベルンゲンの歌』に登場するもので、勇者ジークフリートが小人のニーベルンゲン族を制服したときに得た財宝…

Report No.104 走る舞台

オリエント急行といえば、アガサ・クリスティーの名作推理小説「オリエント急行の殺人」など数々の文学作品、映画の舞台にもなった鉄道ファンならずとも多くの人が知っている列車だ。オリエントはもともとラテン語で東方、東洋を指す言葉で、転じてヨーロッ…

Report No.102 おわら風

お盆というと、京都五山送り火に代表されるように全国で祭りや慰霊行事が多数催される。お盆行事の多くは8月15日を中心に前後数日に集中して行われるが、中には盆と名はついているものの、これ以外の期間で開催されるものもある。その一つが富山県の八尾地区…

Report No.101 天高く馬肥ゆる秋

一口に「団体臨時列車」と言ってもその内容は様々である。旅行会社のツアー企画であったり、結婚披露宴を兼ねたブライダルトレインであったり、企業や学校の部活動の遠征や節目の記念ツアーであったり、はたまた修学旅行であったりと、その内容は実に多岐に…

Report No.100 復刻

SLやまぐち号には永らく、12系客車を改造したレトロ調車両が用いられてきた。しかし、使用されている12系は、最も新しいものでも1971年製であり車齢は46年を超えている。車齢46年ともなれば、経年による老朽化は深刻で、近々置換計画が持ち上がるのではない…

Report No.94 土佐路

およそ30年ぶりにサロンカーなにわが高知へ行く、そんなニュースが飛び込んできたのは2月の半ばだっただろうか。四国デスティネーションキャンペーンに合わせて5月13日から14日にかけて岡山~高知を1往復することが発表された。岡山から高知へとなると、経由…

Report No.90 オイラン列車

最近だとオイランと言われてもなかなかオイランが何なのかわからないという人が多いのではないだろうか。漢字で書くと花魁となりこれまた難読だ。花魁とはかつて存在した吉原遊郭の遊女で高位の者を指す言葉だった。つまるところ、早い話が現代でいう風俗街…

Report No.86 潮風

山陰本線に「出雲」の名前が帰ってくる、そんな胸踊る発表がされたのは2017年の始めのころであっただろうか。14系サロンカーなにわ5両を使用してDD51が牽引し、大阪〜米子を往復の運行で、往路はだいせん、復路は出雲のヘッドマークを掲げて走るという大盤振…

Report No.82 11年前

2006年3月17日発の運転をもって客車寝台特急「出雲」が廃止された。そして、これをもって山陰本線におけるDD51の定期運用および客車列車は消滅となった。それから11年の今年、山陰本線にDD51牽引でサロンカーなにわを使用した団体臨時列車が走ることになった…

Report No.79 ニセコの思い出

函館本線 長万部~小樽間、通称山線。かつてここはC62が牽引する「ニセコ」が走ることで有名だった。C62が引退して以降はC11がその後を引き継いで2014年まで「SLニセコ号」として運行していた。しかし牽引に用いられていたC11に新型ATSの設置が難しかったこ…

Report No.72 Express

今や定期列車から消えてしまった急行列車であるが、かつては関西圏でも多くの急行列車が運行されていた。その一つが、急行「だいせん」であった。2004年に廃止された急行「だいせん」は、末期こそキハ65による運転であったが、1999年10月までは昼行はキハ58…